帰化の家族同時申請について
帰化は、家族同時に申請することもできます。
家族で同時に申請する場合には、まずはメインとなる申請者の方が帰化要件をしっかり満たしている必要があります。
その方の帰化要件がしっかりと満たされていることが確認できたら、同時申請をした配偶者の方やお子様が帰化要件を満たしているのかを判断していきます。
例えば、メインとなる申請者の方が技術・人文知識・国際業務ビザを所有している方だとすると、以下のような普通帰化の要件を満たさなければなりません。
① 居住要件
-引き続き5年以上日本に在留していること
② 能力要件
-日本でも本国法でも成人年齢に達していること
③ 素行要件
-犯罪行為の有無や納税・社会保険料の支払をきちんと行っていること
④ 生計要件
-安定的で継続的な生活が営める収入があること
⑤ 喪失要件
-日本国籍を取得した際には元の国籍を喪失することができること
⑥ 思想要件
-日本を暴力で破壊するような思想をもったり、そのような思想をもつ団体に所属していないこと
⑦ 日本語能力要件
-小学3-4年生くらいの日本語能力があること
そして次に、同時申請する配偶者の方が帰化要件をしていくか判断していきます。
配偶者の方の場合は、国籍法第7条により①居住要件と②能力要件が緩和されます。
【緩和される居住要件】
① 「引き続き」3年以上日本に住所を有し、かつ、現在も日本に住所を有している人
② 婚姻の日から3年経過し、かつ、「引き続き」1年以上日本に住所を有している人
※ただし「引き続き」の条件については注意する必要があります。
【緩和される能力要件】
未成年者でも帰化申請ができる。
他の要件は、普通帰化と同じ水準が求められますが、生計要件については、世帯単位で生計が維持されていれば要件を満たすことになります。
同時申請する方が、お子様の場合も国籍法第8条により帰化要件が緩和されます。
以下の通りです。
【緩和される居住要件】
日本人の子供の場合、現に日本の居住していれば、在留年数に要件はない。
【緩和される能力要件】
未成年者でも帰化申請ができる。
【緩和される生計要件】
子ども単独で生計要件を満たす必要はない
家族同時帰化申請のメリット
家族同時に申請することで以下のようなメリットがあります。
① 改めて取り直さなければならない必要書類が少なくてすむ
② 手数料が安くて済む
③ 未成年の子でも帰化できる
④ 戸籍謄本の作成がスムーズ
改めて取り直さなければならない必要書類が少なくてすむ
帰化申請において重要な必要書類の一つに、本人の身分を確定させるための書類です。
その際には、本人はもちろんのこと、配偶者の方やお子様、ご両親や同居親族の方の本国書類や戸籍を収集する必要があり、その数は膨大になることもあります。
例えば、本人だけの単独申請をして、そのあとに親族の方が別個に単独申請をする場合だと、本人の申請時に集めなければならなかった必要書類を、その後に親族が申請した場合に再度あらためて集めなおさなければなりません。
家族同時申請であれば、必要書類の収集が一度で済むというわけです。
手数料が安くて済む
先ほど家族同時申請であれば、必要書類を改めて取り直す必要がなくなるというお話をしました。
必要書類の取得には、取得のための手数料がかかりますし、本国の書類の日本語訳をお願いすると、枚数が多ければ多いほどかかってくる費用も膨れ上がります。
必要書類の収集が一度で済めば、それだけコストも安くてすむことになります。
また帰化申請を行政書士に依頼する場合も、個々別々に申請するよりも、家族同時申請の方が、行政書士に支払う手数料が安くなります。
未成年の子でも帰化できる
国籍法5条第1項における普通帰化の要件の一つに能力要件があります。
十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること
です。
それゆえに、未成年者の場合は、単独で帰化することができません。
家族同時申請の場合、親の帰化が許可されると、その子どもは日本人の子になりますので、能力要件が緩和されます。
また、15歳未満の帰化申請では、18歳以上で単独で帰化申請するよりも以下のメリットがあります。
● 動機書・履歴書・宣誓書の作成が不要
● 日本語テスト免除
戸籍謄本の作成がスムーズ
帰化の許可が下りた後の手続を市役所を行うと、戸籍が編製されます。
家族同時申請ですと、同じ世帯の家族で一つの戸籍が編製されます。
単独申請ですと、その方一人だけの戸籍が編製されます。
そのあとに、ご両親が帰化をしたとしても、子供が自動的に両親の戸籍に入ることはありません。
同じ戸籍にしたい場合は、入籍の手続をとる必要が出てきます。
帰化の家族同時申請の注意点
帰化の家族同時申請には様々なメリットがありますが、以下のように注意点もございます。
① 家族滞在の場合は素行要件に気を付ける
② 配偶者の方の日本語能力
③ 母国の国籍喪失について理解を得られているか
家族滞在の場合は素行要件に気を付ける
たとえば、家族滞在で日本に在留している配偶者の場合は、原則として日本において仕事ができません。
資格外活動許可が下りていれば、週28時間まではアルバイトで労働が可能です。
帰化申請では、配偶者や同居家族の収入確認において、源泉徴収票や納税証明書の提出が求められますが、そのような書類を確認すると、週28時間労働では到底見込まれない、給与所得や納税額の方も中にはいらっしゃいます。
28時間を超えて就労している事実は、資格外活動を行っており違法行為になりますので、帰化申請に悪影響をおよぼします。
帰化申請を考えている方で、家族滞在の在留資格をお持ちの親族がいらっしゃる方は、資格外活動許可で認められた範囲で就労することを厳守するようにしてください。
配偶者の方の日本語能力
メインとなる申請者が日本において就労ビザで働いている場合は、日本語能力に問題がないことが多いのですが、家族滞在で在留中の配偶者の方の場合、日本語が堪能ではない方もいらっしゃいます。
帰化の許可が下りるためには、日本語能力試験(JLPT)でN3-N4くらいの日本語能力(小学3-4年生くらい)が求められます。
帰化申請から3-4か月くらいすると、法務局から面接を行う旨の連絡が入ります。
面接のやり取りにおいて、担当官が必要と判断した場合には、日本語テストが実施されますので、帰化申請後から面接までの間に、日本語能力に不安がある方は、日本語試験のテキストで学習するなどして、日本語力を鍛えましょう。
母国の国籍喪失について理解を得られているか
帰化をするということは、日本では二重国籍が認められていないので、母国の国籍を喪失するということを意味します。
例えば、メインで申請する方が帰化に納得していたとしても、配偶者の方のお気持ちとしては、元の国籍を喪失することに抵抗感がある方もいらっしゃいます。
その点は、よくご家族内で話し合いをしていただいて、結論を出していただくことをお勧めします。
日本国籍を取得するメリットはたくさんありますが、日本国籍を取得することは母国では外国人になることを意味します。
母国に長く滞在する場合は、ビザの取得も必要になります。
老後に母国で暮らすつもりだということであれば、帰化をしない方がよろしいかもしれません。
将来の人生設計もよく踏まえてご検討されるとよろしいかと思います。
ご不明な点や不安な点などありましたら、当事務所にお気軽にご相談いただければと思います。