自営業・会社経営者・役員の帰化
自営業者・会社経営者・役員の帰化は難易度があがる
自営業者や会社経営者・役員の方の場合、会社員の方に比べて帰化申請で許可が出る難易度があがります。
というのは、会社員の方であれば、個人について生計要件や素行要件などの帰化要件をクリアできていれば許可が出ますが、自営業者や会社経営者・役員の方ですと、個人でいくら帰化要件をクリアしていても、事業や会社の経営状態が良くなかったり税金を納めていないと、不許可になる可能性があるからです。
このように、自営業者や会社経営者・役員の方の場合、個人についてだけでなく、事業や会社の書類を集めて、経営状態に問題がないことを証明しなくてはならない分、手間がかかります。
また、申請者本人だけでなく、同居のご親族に会社経営者・役員の方がいる場合は、その方の属する会社に関しても書類が必要となりますので注意が必要です。
そして、過去に会社経営者や役員であった方に関しても、申請時からさかのぼって3年前までに経営者・役員であった場合には、やはり該当する会社に関する書類が必要になります。
登記簿に役員・取締役として登記されているだけの名義貸しであっても、その会社に関する書類を提出しなければなりませんので、注意が必要です。
自営業者・会社経営者・役員に関連する必要書類
事業や会社について、具体的にどのような書類を集めなければならないかというと、主に以下の通りです。
【自営業者の方】
@ 都道府県・市区町村民税の課税証明書あるいは非課税証明書
− 1年分
※ 総所得金額の記載ありのもの
A 都道府県・市区町村民税の納税証明書
− 1年分
B 所得税の納税証明書(その1・その2)
− 3年分
C 所得税の確定申告書(控えのコピー)
− 1年分
※ 別表・決算報告書・青色申告決算書・収支内訳書含む
D 事業税の納税証明書
− 3年分
※ 売上年290万円以上で課税対象の場合
E 消費税の納税証明書
− 3年分
※ 前々年の売上が1,000万円を超える場合
F 源泉徴収納付書(所得税徴収高計算書)・領収書のコピー
− 1年分
※ 給与を支払っている事業者の場合
@ 法人都道府県民税・市区町村民税の納付証明書 − 1年分 A 法人事業税の納付証明書 − 3年分 B 法人税の納付証明書(その1・その2) − 3年分 C 消費税の納税証明書 − 3年分 D 法人税の確定申告書コピー − 1年分 ※ 別表・決算報告書・青色申告決算書・収支内訳書含む E 源泉徴収簿のコピー − 1年文 ※ 申請者に関する部分のみで可 F 源泉徴収納付書(所得税徴収高計算書)・領収書のコピー − 1年分 G 厚生年金保険料領収書のコピー − 1年分 H 健康保険料の領収書等のコピー − 1年分
【会社経営者・役員の場合】
これらの書類から、会社の経営状態や会社の義務(税金や社会保険料をきちんと支払っているか)を審査するわけです。
ポイントについて詳細に解説していきます。
会社の経営状況について
黒字でキャッシュフローに問題なく債務超過にも陥っていなければ問題ありません。
赤字が出ている場合は、帰化で許可を得ることは基本的に難しくなります。
ある月で赤字が出てしまった程度であれば問題ないと判断される可能性がありますが、決算において赤字の場合は黒字化させてから帰化申請するようにします。
また、複数の会社を経営したり役員になっている場合に、どれかひとつの会社で赤字が出ている場合でも帰化申請に影響を及ぼします。
その他に注意しなければならない点は、会社経営者・役員の方の役員報酬です。
黒字化するために役員報酬を低く設定している方に関しては帰化の許可が下りません。
最低でも手取りで月18万円の役員報酬は確保する必要があります。
納税について
自営業でも会社経営者・役員でも次の3つの税に関してきちんと納税ができているか審査されます。
@ 所得税 ※ 法人の場合、法人税
A 事業税 ※ 法人の場合、法人事業税
B 住民税 ※ 法人の場合、法人住民税
所得税・法人税は国に治める税金です。
事業税・法人事業税は都道府県に納める税金です。
住民税・法人住民税は都道府県と市区町村に納める税金があります。
税務調査に入られたことがある方は注意が必要です。
過去3期分において修正申告をしたことがある場合は、修正申告書の控えが必要になります。
修正申告程度であれば、帰化が許可される可能性がありますが、重加算税を課されたことがある場合は、2-3年の間帰化申請できません。
【社会保険料について】
自営業者でも会社経営者・役員でも、次の社会保険料に関してきちんと支払ているかの審査が行われます。
@ 公的年金保険料
A 公的医療保険料
B 介護保険料
公的年金保険料については、国民年金と厚生年金に分かれます。
個人事業主でも常時5人以上の従業員を雇用している場合は、厚生年金の加入が必須です。
また、1人社長の法人であっても厚生年金の加入は必須になります。
個人事業主で厚生年金に加入していない方は、第一号被保険者になりますので、ねんきん定期便等で直近1年分の支払い状況を証明します。
法人の場合は、社会保険料納入証明書や社会保険料納入確認書などで証明します。納入確認書の方が迅速に発行されます。
公的医療保険料については、国民健康保険と社会保険(健康保険)があります。
国民健康保険の被保険者の方の場合は、国民健康保険料納付証明書などで支払状況を証明します。
常時5人以上の従業員を雇用する事業所や法人の場合は、健康保険の加入が必須になります。
その場合は、年金事務所が発行する健康保険料の領収書などで支払状況を証明していきます。
介護保険料は40歳以上の方が納めなければならない社会保険料です。
65歳未満の方に関しては、国民健康保険料や健康保険料と合わせて納付されておりますので、それらについての証明ができればクリアできます。
65歳以上の方に関しては、基本的に年金から天引きされておりますので、公的年金等の源泉徴収票や介護保険料納付証明書などで支払状況を証明していきます。