特別永住者とは
特別永住者とは、1991年11月1日に施行された『日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)』に定められた在留資格を有する方のことです。
具体的にいうと、いわゆる「在日」と呼ばれることもある在日韓国人・朝鮮人の方です。
※正確に言うと在日台湾人の方も含まれますが、数でいうと圧倒的に在日韓国人・朝鮮人の方が多いです。
かくいう私も「在日」であり、兄が結婚を機に帰化した時の大変さを身近に感じ、在日の方をはじめとした外国人の方の帰化申請サポート業務を始めました。
特別永住権についての話に戻します。
第二次世界大戦中、日本の占領下で韓国人・朝鮮人・台湾人の人たちは、戦後1952年のサンフランシスコ平和条約の締結により、日本国籍を離脱しました。そのような経緯で日本国籍を離脱した韓国人・朝鮮人・台湾人やその子孫の方について永住を許可したのが「特別永住権」です。
ということで、在留資格において、「永住権」と「特別永住権」は別個のものになります。
特別永住者には、在留カードではなく、特別永住者証明書というカードが交付されます。
そして、永住者が在留カードを常に携帯していなければならないのとちがって、特別永住者は特別永住者証明書を常に携帯しなければならないという義務がありません。
また、特別永住者証明書にも、有効期間があり、更新の手続きが必要ですが、住居地の市役所でごく簡易的に手続きを済ますことができます。
帰化申請についても、日本生まれの特別永住者については、特別なことがない限りは、申請が受理されれば基本的に許可される可能性が高いです。
特別なことというのは、過去に重大な犯罪を犯しているなどのことです。
このように帰化要件は緩和されているものの、帰化申請に必要な書類が少なくなるということではありません。
むしろ、日本で長く暮らしている分、普通帰化と比べて収集する書類が多くなることの方が多いので帰化申請のための準備はとても大変なものになります。
特別永住者の帰化要件
帰化の基本的な要件7つは以下の通りです。
@ 居住要件
―引き続き日本に5年以上居住している。そのうち就労している期間が3年以上ある。
A 能力要件
―18歳以上であり、本国法でも行為能力を有している。
B 素行要件
―素行が善良である。
C 生計要件
―ご本人や配偶者・その他親族の方の資産や収入で安定した生計を維持することができる。
D 喪失要件
―日本国籍を取得した後に元の国籍を喪失することができる
E 思想要件
―暴力団や過激派団体などに加入したことがない
F 日本語能力
―日本人として日常生活を送っていける程度の日本度能力を有する
特別永住者の場合、このうちの@居住要件は緩和されます。また、F日本語能力についても特別永住者の方の場合、日本生まれ日本育ちの方が多いですので、ほとんど問題になりません。
それぞれの要件について、解説していきます。
@ 居住要件
普通帰化の場合、引き続き5年以上日本に居住している必要がありましたが、特別永住者の場合は、この要件が緩和されます。
※「引き続き」とは、日本を離れていた期間が連続して90日以上なく、年間で合計100日以上でないこと
というのも、特別永住者の方の場合、
● 日本国民であった者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
● 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
に該当するからです。
※ただし「引き続き」の条件については注意する必要があります。
A 能力要件
18歳以上で、かつ、本国の法律でも成人年齢に達している必要があります。
例えば、韓国の場合は成年年齢は19歳です。
B 素行要件
年金・税金および贈与税などを納税していることが求められます。
会社経営者の方の場合は、法人できちんと社会保険に加入していなければなりません。
また、交通違反・前科・犯罪歴がないことも必要です。
交通違反には、駐車違反やスピード違反も含まれます。
審査では過去5年分の交通違反が対象となります。
過去5年間に5回未満の違反であれば基本的には問題ないとされます。
C 生計要件
ご本人や生計を共にしている配偶者・その他の親族の収入によって、安定した生計が成り立っている必要があります。
安定した生計については、永住申請と違い年収要件はありません。
支出(家賃・食費・光熱費など)と収入を差引きして生計が成り立っていれば問題ありません。
それでも、大体の目安として、手取り18万くらいはあると要件を満たすと考えられております。
D 喪失要件
日本国籍を取得した際に、元の国籍を失うことができなければなりません。
在日韓国人・朝鮮人・台湾人の方については、問題ありません。
E 思想要件
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり主張するような者、そのような団体を結成したり加入しているような者は日本国籍の取得はできません。
F 日本語能力
国籍法において規定されている要件ではありませんが、日本人として生きていくために、日常生活に支障のないレベルの日本語能力が求められます。
大体小学校3-4年生レベル(日本語能力試験(JLPT)でN3-N4レベル)があれば安心です。
法務局での面接の際に、担当官の判断によって、日本語テストが課されたりもします。
特別永住者の方であれば、日本生まれ日本育ちの方が多いので、この点問題になることはほとんどありません。
特別永住者の方の帰化申請は、要件が緩和されているとはいえ、日本での居住期間が長いゆえに、収集したり翻訳しなければならない書類が膨大になる傾向があります。
必要書類が分からない、仕事などで忙しくてとても自分では申請書類や必要書類の作成や収集ができない、という方は、是非専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所では、おひとりおひとりに最も適した書類をリストアップするとともに、申請書類の作成や当事務所で集められる必要書類の収集など、帰化申請のサポートを行うことができます。
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