国籍喪失=離脱の手続について
日本の国籍法第14条には次のような定めがあります。
外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなった時が十八歳に達する以前であるときは二十歳に達するまでに、その時が十八歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
要するに、日本は二重国籍を認めていないので、帰化の許可が下り、はれて日本人になった後は、すみやかに元の国籍の離脱手続をしてくださいね、ということになります。。
国籍離脱には次の2つのパターンがあります。
@ 帰化許可が下りる前に国籍離脱をしなければならない場合
A 帰化許可後でなければ国籍離脱できない場合
@のケースは、その国の法で自国の国籍を離脱してからでないと別の国籍を取得できないと定めている国が対象です。
例えば、台湾・香港・ベトナム・ロシアといった国です。
Aのケースは、その国の方で、外国籍(つまり日本国籍)を取得した後でなければ、自国の国籍を離脱できないと規定されている国が対象です。
例えば、韓国・中国・アメリカ・多くのヨーロッパ諸国
それでは国籍離脱はどのようにすればよいのでしょうか。
例えば韓国人の国籍離脱手続の流れついてみてみましょう。
@ 帰化の許可が下りたら法務局で帰化者の身分証明書を受け取る
A 帰化者の身分証明書をお住まいの市区町村役場に持参し、住所登録と戸籍の編製を済ませる。
※ 住所地以外を本籍地にする場合戸籍の編製までに2週間ほどかかります。
B 戸籍の編製後、戸籍を取得し日本のパスポートを作る
C 必要書類を韓国領事館に持参し、国籍離脱の手続をする。
D 3か月から半年ほどで国籍離脱が完了し、基本証明書に国籍喪失の登記がされる。
基本的な必要書類は以下の通りです。
@ 国籍喪失申告書(ハングルで記載)
A 戸籍謄本とその韓国語訳
B 住民票とその韓国語訳
C 基本証明書
D 家族関係証明書
E 婚姻関係証明書
F 親の基本証明書
G 証明写真(3.5cm×4.5cm)
H 韓国のパスポート(返却)
I 日本のパスポート(コピー)
※その他、管轄の領事館によっては、追加書類が必要になる場合もあります。
ちなみに、国籍喪失の手続をするために、韓国領事館で手数料や印紙代はかかりません。
さて、これまでの解説をみてきてわかるとおり、国籍離脱手続はとても面倒な手続です。ポイントをまとめてみました。
@ 申請書や戸籍、住民票はハングルで記載、韓国語訳を提出しなくてはならない
A 国籍喪失届は原則として本人がしなければならない。
※ 親族であれば代理申請可能だが、委任状や親族関係証明する書類が必要
当事務所では、当事務所の帰化申請サポートをご利用していただいた韓国籍のお客様に限り、国籍離脱の手続もサポートさせていただいております。
その場合は、申請書の作成、書類の韓国語訳など、書類の整理をさせていただき、必要書類一式をご本人様にお渡ししますので、それを持参して領事館で申請していただくという形になります。
韓国人は国籍離脱をしなくてもよいって本当?
日本は二重国籍を認めていないので、帰化をした後は、国籍離脱の手続をしなくてはならないけれども、
「日本の法務省と韓国の法務部長官との間では、定期的に(大体1-2年)、帰化者のデータの受け渡しがされており、職権で国籍喪失が行われているので、韓国人の場合は、国籍離脱の手続をしなくてもよい」という話は帰化界隈では有名です。
ただし、帰化した韓国人の自動的な国籍喪失が絶対確実に行われているかというと分かりませんし、実際に家族関係登録簿が閉鎖されていない例もあると聞きます。
先ほども見たように、日本の国籍法でも国籍の選択をしなければならないと定められております。
また、大韓民国の国籍法でも、日本に帰化して韓国籍を喪失した者は、国籍喪失届を提出する義務があると定められています。
確実に国籍離脱をするためには、韓国人の方であっても、保証のない自動的な国籍喪失に頼ることなく、自ら韓国領事館に国籍喪失届を提出することが確実であると考えます。
日本国籍の選択宣言って何ですか?
日本の国籍法第14条第2項には次のような規定があります。
日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによってする。
これまで、帰化後に元の国籍を離脱する手続について解説してきましたが、日本の国籍法ではそれとは別に、日本国籍の選択宣言による方法も認めているということになります。
ただし、国籍法第16条には
選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
とありますから、選択の宣言をしたとしても、引き続き元の国籍の離脱には努めてくださいね、ということになります。
ただし、法律上は、努めなければならないと規定されている以上、義務ではないということです。
なので、様々な事情で、元の国籍の離脱手続がうまくいかないという場合は、とりあえず日本国籍の選択宣言だけでもしておけば、日本の国籍法上は、14条第1項の国籍の選択義務を済ませたということになります。
日本国籍の選択宣言は、本籍地あるいは所在地の市区町村役場に国籍選択の届書を提出することで可能です。
手数料はかかりません。